2026年1月10日に、オンラインにて一般社団法人AWESOME・理化学研究所 「AI×電力の女性研究者・技術者と一緒に未来を考えよう(オンライン)」のオンラインイベントを実施し、全国から15名の中高生女子が参加しました。
本イベントは、10月から開催中のAWESOME Challenge~理系の世界で未来を描く探究プログラム~の一部である「研究者・技術者インタビュー」の回を多くの女子中高生たちに触れていただくことで、理系と社会の繋がりに触れ、理系キャリアの可能性を体感してほしいという思いから、一般公開する形で開催しました。
第2弾となるこの回では、「公平さを探るAI研究と電力を届ける技術がひらく未来図」というテーマで、理化学研究所 革新知能統合研究センター(理研AIP)でゲーム理論や社会選択理論の研究をされている五十嵐先生と、関西電力送配電株式会社で海外における送配電案件の開発をされている関小田さんをお迎えし、講話に加えて生徒たちからの質問にも答えていただく時間を持ちました。
プログラム内容📋
1.オープニング
2.五十嵐 歩美先生(理研AIP 汎用基盤技術研究グループ 計算的社会選択理論チーム チームディレクター)による講話
先生の研究テーマである「限られた資源をどのように公平に分ければよいか」を「ケーキ分け問題」を例に紹介いただきました。このテーマについては、なんと旧約聖書にも記載されているとのこと!紀元前から人類にとって大きなテーマだったこと、そしてこのテーマが数学的アプローチで解決することができるというお話が印象的でした。
また、公平性だけでは真の「公平」ではなく、そこに「効率性」も重要な要素になってくるということや、公平性の定義する一つとして「妬み」と考え、「公平な配分=妬みのない配分」と考えることで、妬みのない配分を数学的に達成できるというお話、そして家事分担アプリがどのように設計されているかのお話から、数学が自分たちの日々の困りごとや社会課題を解決してくれるのかというのが大きな発見でした。

3.中高生たちによるインタビュー
「公平という考え方には人の感情が大きく関わっているが、それをAIが正しく判断することは可能なのか?」という高校生の質問に対し、五十嵐先生からは「研究者としてのやり方は演繹的な※(※大きな一つの大前提から結論を推論すること、論理的に必然的な結論を導き出す方法)アプローチで判断するのに対し、AIはあるデータに基づいて機能的に判断します。AIに公平かどうかを学習させ訓練させていけば近い判断ができるようになるが、あくまでデータベースのものになるので、哲学的に公平か否かという判断とは異なってくると思います」とお答えいただきました。
また、「すべてのものが、先生の理論で公平か不公平かできっぱり判断できるのか」という質問には、「家事分担を例に挙げると、パートナー間の賃金差や仕事時間差など、モデル化できていない部分は多いため、数学だけで判断するのは限界がある。ただ、数学的に判断できなくても、最終的には当事者たちが納得することが重要なので、話し合いなどで公平感を担保できれば問題解決につながると考えています」と回答いただきました。
家事分担から、人の配属、コロナ禍のワクチン分配など、身近にあるテーマを数学的アプローチで研究されていることもあり、上記の他にも多くの質問が高校生やラーニングアシスタントから上がっていました。

4.関小田 明里さん(関西電力送配電株式会社)による講話
ご自身の大学進学時の進路選択から、どのように今の電力事業という仕事を選ばれたかというお話に続いて、どのように電気が私たちの手元に届けられているかについて説明いただきました。2018年に関西を直撃した台風21号や北海道胆振東部地震による大規模・長期間の停電を例に挙げ、「電力系統のレジリエンス(強靭性)の強化」の解決策の一つとして、「マイクログリッド」と「オフグリッド」を教えて頂きました。火力や原子力などの大規模電源に接続しない「電力の地産地消」で電気を届ける方法は興味深い一方で、未だ日本では実証中であり、長期間の実運用には至っていないため、すでに実運用を行っている海外での知見を獲得して日本に展開すべく、様々な国の開発者とプロジェクトを積極的に進めているというお話が印象的でした。
5.中高生たちによるインタビュー
「オフグリッドを進めると、発電会社の電力提供が減ってしまいますが、発電会社がオフグリッドを推進するメリットはあるのですか?」という高校生からの質問に対して、「オフグリッドを推進するのは、電力を送り届ける一般送配電事業者であり、電気を作る発電事業者ではありません。ご理解のとおり、電力系統の一部がオフグリッド化されると、その分の電力供給量が減るものの、対象となるのは山間部の数軒分の住宅などごく限られた需要であるため、発電会社への影響は限定的と考えています。」と回答いただきました。
また「メガソーラーなどの太陽光パネル設置が最近問題になっていますが、オフグリッドやマイクログリッドを進めると悪化してしまうのではないですか?」という質問には「ニュースなどで問題となっている、山を切り拓いて大量の太陽光パネルを設置する「メガソーラー」は、発電会社が電気を販売することを目的に設置しているものです。一方、一般送配電業者が推進するオフグリッドや自治体・事業者によるマイクログリッドは、災害時の電力確保(レジリエンス強化)や電力の地産地消を目的としています。そのため、屋根の上や小規模な空き地に設置されるケーズが多く、環境破壊や景観悪化を引き起こすものではないと考えています。」と回答いただきました。
「マイクログリッドとオフグリッドの開発で、海外と日本でどれくらいの差があるのですか?」という質問には、「日本ではマイクログリッドやオフグリッドの導入は進みつつあるものの、まだ実証的な段階です。一方で、例えばオーストラリアは、すでに数十か所のオフグリッドを実際に運用されています。その背景には、広大な国土に送配電線を敷いていくと莫大な費用も掛かるため、集落ごとに電力を「地産地消」するオフグリッドの実運用が進んでいるという現状があります。また、電力供給が安定していない発展途上国においても、工場地域などでは自前でオフグリッドを設置するという動きも見られています。」という回答を頂きました。

6.クロージング
参加者の声📣
「公平性と効率性の両立を、数学を使って向き合っているのがとても面白かったです」
「マイクログリッド、オフグリッドという単語は初めて聞いたので、自分の知識が深まった有意義な時間になりました」
「家事を分担するアプリのお話がとても印象に残りました。日常生活で利用できるようなものをアプリという形にされたところにとても感動しました」
「公平さを感情の妬みに変換して、それを数字で表現するプロセスが興味深かったです」
「家事の量や感情などを数値化して、そこから課題解決に向けた策を提案できるところがすごいと思いました」
「日常生活において、数学とは関係がないと思っていたようなことにも数学が使えることを知ることができ、勉強するモチベーションになりました」
Girls Meet STEMでは、今後も企業や大学等と連携し、中高生女子の将来の選択肢を広げるための活動を続けてまいります。次回の開催もお楽しみに!
詳細はこちら:
● 一般社団法人AWESOME ウェブページ:https://www.awesome-stemwomen.org/
● 一般社団法人AWESOME インスタグラム:https://www.instagram.com/awesome_stemwomen/
● 理化学研究所革新知能統合研究センター:https://www.riken.jp/research/labs/aip/
● 関西電力送配電株式会社:https://www.kansai-td.co.jp/